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アメリカの障害者法


★公民権運動としての障害者差別禁止法『ADA(障害を持つアメリカ人法:Americans with Disabilities Act of 1990)』の成立

 アメリカは歴史的に見ても人権の尊重を重んじ、また、その人権を勝ち取るための意識がとても高い国(国民性)であるといえます。
 1964年に制定された公民権法では、人種、肌の色、信仰、性別、出身国による差別を非合法とする者であったのですが、障害者については、障害についての差別を規定する者は含まれていませんでした。
 公民権法により、多くのアメリカ国民は、あらゆる面で権利の保護を求められるようになりましたが、依然として、障害者は社会の片隅に追いやられ差別を受け続けることには変わりありませんでした。当時は、障害者は、能力が劣り弱者であって、保護の対象としか見られていませんでした。これは、保護という名のもとに、社会から障害者を隔離するということにつながってしまうという考え方であるともいえました。

 アメリカでの公民権運動は、1970年代に障害者も社会の一員であるという考え方が進み、保護の拡充から平等な社会参加への要求に向かって行きました。1973年には、障害者に対する差別を禁止し彼等の市民的権利を保護する連邦法としてリハビリテーション法が成立しました。この法律では、連邦政府が実施、または、、連邦政府より委託を受けるサービスについて障害者への差別を禁止する者でしたが、対象となるものは、限定され広く国民の生活に関わるようなサービスまでには、波及することはありませんでした。
 そのため、より広範な障害者差別撤回への機運も高まり、全米の障害者団体が、一体となり新たな障害者差別禁止の法制度を求める運動が展開されてゆきました。
 1988年にはADAのもととなったAmericans with Disabilities bill of 1988という全米障害者評議会がまとめた法案が、上院、下院に法律案として提出され、1990年7月に、障害をもつ人のための包括的な公民権の保護を規定したADA(障害を持つアメリカ人法:Americans with Disabilities Act of 1990)が制定されるに至りました。

 ADAの大きな柱は、
Title I - Employment (雇用)
Title II - Public Services (公共サービス)
Title III - Public Accommodations (公共施設での取扱い)
Title IV - Telecommunications (電話通信)などとなっています。
なお、2008年に法改正が行われ、障害の範囲について、解釈が拡大されました。
第1章 1990年障害のあるアメリカ人法(2008年改正) - 内閣府
>を参照。

 Title I - Employment (雇用)では、公的機関や、15人以上を雇用する民間事業者が、雇用時に身体や精神の障害を理由に、差別的取り扱いをすることを禁じており、障害に配慮した設備の改修や、手話通訳、代読者などの配置なども義務付けられました。
Title II - Public Services (公共サービス)と、Title III - Public Accommodations (公共施設での取扱い)では、行政的な公共サービスだけではなく、民間が行うあらゆるサービス(交通機関、病院、学校、レストラン、ホテル、飲食店…などあらゆるサービス)においても、障害者の利用を障害を理由にして不当な取り扱いを禁止するものです。例えば、全米にネットワークを持つ、長距離バスでは、全ての車両に車いす用リフトの設置が義務付けられました。(移動の自由の保障)
Title IV - Telecommunications (電話通信)では、聴覚障碍者に対するリレー通話サービスを、全米で24時間いつでも使える体制を整えられるよう義務付けられ、全米で実施されています。
 日本では、日本財団において、日本財団電話リレーサービスが、実施していますが、時間の制約や、エリアの限定などまだ道半ばのようです。

 これらの、ADAの成立は、障害者権利条約での“合理的配慮の提供”の既定に対して大きな影響を与えたといわれています。

 特にADAの成立において、アメリカらしい特徴として、障害者への差別的扱いによる、経済的観念が挙げられます。障碍者が社会(経済活動)から排除され、福祉を施される対象としての“コスト”となるより、障害による機能を補うコストをかけてでも障害者が経済活動に参加してゆく(納税者となる)ことの方が、財政負担も少なくなるという論拠が挙げられているということは興味深いものです。

 また、ADAの成立までには、障害者自身の高い権利意識と、一般国民(健常者)の間での認識の隔たりも根深く存在していたようです。そして、社会が障害者を受け入れるための“コスト”を負担してゆくということについても、コンセンサスを得るまで長い戦いがあったのだと思います。
 そして、ADAによりアメリカ国民としての権利を保障されることになったアメリカの障害者は、自らの自立した生活を得るために、今現在もADAを武器にしてアメリカ社会の中で生きているのです。


[参考資料]
障害を持つアメリカ人法の基礎 / Basics of the ADA - International - Reeve Foundation

◆おすすめ動画
ADA アメリカ障害者法の衝撃 / 1990 障害を持つアメリカ人法 - YouTube








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