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ロービジョンケア

 眼が見えずらい、という症状があるときには、まず、眼科の診療を受けて、治療や、眼鏡やコンタクトレンズなどでの視力矯正を行うことが優先されています。また、患者自身もそれを最も望むことだと思います。
 しかし、すべての疾患において、視力の回復ができるというようなことは、残念ながら現在の眼科医療ではまだ不可能です。
 このような、視力という数値を上げてゆくというような、矯正医療に偏ってしまうと、眼が治らないということで、見えにくさを残したまま放置されてしまいます。これでは、見えるということを前提とした普通の社会構造と、見えないということを前提とした視覚障害者向けのバリアフリー、もしくは、ユニバーサルデザインによる社会構造の狭間に取り残されてしまいます。
ロービジョンケアとは、こうした「見えにくさ」を、自ら受け入れ、その残存する視機能を最大限生かしてゆく手段を身に着けてゆくということを目的としています。そして、ロービジョンケアには、医療と社会福祉の懸け橋となる役割があります。

★ロービジョンケアの内容★
1.医療的ケア
 医師や、視能訓練士のアドバイスを受けながら、まぶしさを抑えるための特殊なレンズを使用した遮光眼鏡や、単眼協、ルーペや拡大読書器など、様々な見え方に応じた器具や機器の提案を受けて、その人に最適なものを選んでゆきます。
 また、限られた視機能を最大限に生かすための眼の使い方などを学習することとなります。

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2.教育的ケア
 小児におけるロービジョンであれば、盲学校や特別支援学級などへの就学を検討をするほかに、補助機器を利用しての学習方法をなども提案されます。かつては(現在でも)、大活字教科書などが使われていますが、例えば、タブレット端末のカメラ機能を使うことで、拡大したり、白黒反転にしてコントラストを強調して見やすくすることもできるようになりました。重たい大活字教科書を持ち歩かなくとも普通のサイズの教科書を使えることは、子どもにとっての負担の軽減ともいえます。
 また、中途視覚障害の者にも教育的なケアとして、安全な歩行のための白杖の使い方や、危険回避の姿勢の取り方なども訓練が必要となります。歩行訓練士による指導を受けながら、各自の見え方に応じた、安全な歩き方を習得してゆきます。
 その他にも、視覚に依存せずに、聴覚や触覚による認知機能にも意識を向けてゆくということも必要なことです。

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3.職業的ケア
 社会福祉士や、社会保険労務士などと情報交換をしながら、 職業訓練や、就労移行支援事業などへの橋渡しをします。

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4.社会的ケア
 見えにくいということでの日常の不便さを解消もしくは、軽減するために、便利グッズ(日常生活用具給付対象品目を含む)の紹介や、支援サービスの情報提供を行います。
 音声時計や拡大読書器などのほかにも、食材を見えやすくする黒いまな板や、白米が見えやすい内側の黒いごはん茶わん、文字を枠内に収めて書く際に便利なスレッドの空いたプレートなど様々な便利グッズが提案されています。

 また、これからは、パソコンやタブレット端末を活用したICTの利活用もロービジョンケアの柱となってゆくはずです。
 また、読書支援として、点字図書館や、公立図書館のハンディキャップサービスといった、公共サービスの案内も行われます。

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5.福祉的ケア
 障害者手帳や、障害基礎年金などの手続きについて相談を受けたり、認定に必要な手続きを行ったりします。
 福祉的ケアでは、社会福祉士などから、障害者福祉制度について詳しく話を聞くことが大切です。自立支援を受けたり、福祉サービスを受けるには、自ら申請しなければなりません。障害者手帳を受け取っただけでは、自立支援を受けることはできません。福祉制度をよく知ることが、生活の質の向上につながります。
 障害基礎年金は、障害者手帳の認定とは、まったく別の手続きとなりますので、障害基礎年金に詳しい社会保険労務士に相談することをお勧めします。
 こうした福祉の専門家につないでゆくことも、ロービジョンケアの大きな役割です。

6.心理的ケア
 眼が見えにくくなってしまうことや、見えなくなってしまうという不安は、一人で抱え込んでしまっても解決できるものではないと思います。必要に応じて、臨床心理士などのカウンセリングを受けることや、同じ悩みを持つ人との交流なども、その悩みを解消する手助けとなります。
 このような心理面からのサポートや、患者団体や、私たちの様な障害者団体とのつながりを持つきっかけを作ることもロービジョンケアが果たす役割といえます。

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 このように、ロービジョンケアには、眼科医の他に、視能訓練士や歩行訓練士、臨床心理士、社会福祉士や社会保険労務士、教育関係者、その他にも、福祉行政、福祉団体及び、福祉機器の開発、販売事業者など非情に広範多岐にわたっています。

★医療と福祉の懸け橋となるロービジョンケア★
  機能的な障害を克服してゆくことが医療であるということに対して、福祉は、社会的モデルの障害を克服するための手段であるといえます。
 とかく眼科医療では、視力の回復や、視機能の回復に医療的価値が置かれ、視機能の補完や代替手段を与えてゆくということには、あまり関心が注がれていませんでした。これでは、視力、視機能の回復が困難な患者は見えにくい、見えなくなってしまうという不安のまま時を過ごしてしまうことになってしまいます。
 そして、そうした人たちが医療から取り残されてしまうと、行き場がなくなり途方に暮れてしまいます。眼が見えずらくなったからと言って福祉事務所に飛び込む人はまずいないと思います。まずは、眼科に行くはずです。医療だけでは回復できない障害を、社会福祉での支援につなげてゆくことも医療の役割の一つと思われます。
 こうしたことから、近年では、眼科医院や総合病院に、ロービジョン外来(LV外来)を設けて治療と並行的にロービジョンケアを実施しているところも少しずつ増えてきています。
 また、ロービジョンケアがしっかりと機能するためには、眼科医療側の働きだけでは不十分です。福祉行政や、教育機関、支援機関や機器の開発業者さらには、障害当事者団体なども連携しながら取り組んでゆく必要があるのだと思います。

<関連リンク>
ロービジョンケアを実施している医療機関については、以下のサイトを参照してください。
日本ロービジョン学会
5 ロービジョンケア施設 | 公益社団法人日本眼科医会

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 私たちは、東京都府中市内に在住する、目が見えない、見えにくいという障害を持つ当事者とその家族、そして、様々なサポートをしていただいている方々で活動をしています。
 市内には、およそ500人余りの視覚障害者がいるとされています、その他にも、障害未満の“ロービジョン”の方々を含めると、その数はさらに増えることとなります。府中視覚障害者福祉協会(府中視協)は、府中市内で生活する、視覚障害者のQOL(quality  of life:生活の質)の向上と、障害への理解を深めていただくための活動、及び、障害を持つ当事者とその家族の親睦を図り、日常生活での悩みや困りごとを共有して、その解決を図るために会員相互で協力し合い、共助では、補いきれないようなことについては、市政や福祉に働きかけて私たちの暮らしに反映させてゆくことをモットーにしています。

 視覚障害とは、単に、目が見えない、見えにくいということだけではなく、そのことにより、日常生活や、就労、就学などにおいて、様々な制約や不利益など、社会的障壁によって生じることによる障害であるといえます。

 私たち府中視協は、日々の活動を通して“障害が有る無しに関わらず、誰もがいつまでも安心して暮らし続けられるまちづくり”を、市民の皆様とともに、進めてゆきたいと思っています。
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