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5.東日本大震災からの教訓

東日本大震災で犠牲になった視覚障害者は、震災犠牲者のうち、0.6%程度を占めていたと推測されています。(日本盲人福祉委員会による調査)
 国内の全人口に占める視覚障害者の割合は、約0.3%と言われています。このことからも、視覚障害者の震災による死亡率は、2倍になっているということがわかります。
 また、消防士や警察官、地域の消防団員や民生委員なども、避難困難者を救出するために、災害のただなかに飛び込み、犠牲になられた方も多くいました。
 このことから、従来の要援護者名簿(災害時
要援護者の避難支援ガイドライン、平成18年3月)の在り方では、災害時の弱者を、円滑に救出することが困難であるということが、明らかになりました。
 それを受け国では、平成25年に災害対策基本法の改正を行い、災害弱者となりうる高齢者や、障害者を対象にした、“避難行動要支援者名簿”の作成を市町村に義務づけるとともに、その個人情報を災害対策や防災対策に活用できるようにしました。
 作成された要支援者名簿は、平常時には、記載された本人の同意のもとに、地域の消防や、消防団や町内会などの、自主防災組織に提供され、避難訓練や防災訓練に活用することができるようになりました。
 また、災害発生時や、災害が差し迫っているような場合には、本人の同意の有無にかかわらず、消防や、自主防災組織等にその名簿情報を、提供することができるようになりました。
 そして、それらの支援機関には、要支援者名簿に記載される個人情報の守秘義務が課せられ、その管理を適切に行うことが義務付けられています。

 では、地震や津波などの襲来から、無事に非難ができた後は、どうだったのでしょうか、誰もが混乱している中で、周囲の状況を把握することも困難であったことは言うまでもないことだと思います。まずは、声を出して周囲に援護を求めるほかないのだろうと思われます。

 避難所などで、最も困ったこととして、「トイレ」が挙げられています。その場所に行くことに始まり、列に並ぶこと、水の流し方やトイレットペーパーの配置まで手探り状態 だったといいます。対策としては、使い捨ての簡易トイレなどを多めに備蓄しておくということも考えられるのかもしれません。
 また、掲示板などに書かれた情報も、見ることができないために、支援品の受け取りができなかったり、お風呂に入れなかったりするなど、情報からの隔絶にも配慮を求める必要があります。

 震災発生直後からは、日本盲人福祉委員会がチームを作り、被災した視覚障害者の救援や支援に奔走したということです。それによれば、どこにどれだけの視覚障害者がいるのかということを、障害者団体名簿や、点字図書館の利用者名簿、盲学校の卒業名簿などから拾い出し、一人一人に電話などで安否確認を行い、連絡が付かない者には、居住地まで足を運び、自宅や避難所を訪問して回ったということです。
 しかし、これでは、視覚障害者の1割程度にしかなりません。その他の8割の視覚障害者の情報は、各県の福祉課が持っていますが、個人情報保護の壁に阻まれ、すぐには提供を受けることができなかったといいます。

 震災から2~3か月を経て、支援の必要性からも、視覚障害1・2級のものへの支援要望のアンケートが集計され地域にひっそりと潜伏していた視覚障害者への支援がようやく始められました。
 これらの地域の障害者団体や、点字図書館などともかかわりを持っていなかった、8割の視覚障害者の中には、中高年で失明し、以後、数十年誰ともかかわることなく地域で孤立していたという人もいたということです。そういう地域に潜伏してしまっていた視覚障害者においては、様々な情報からの隔絶もあり、音声時計の存在を知らなかったという者が、約4割、日常生活用具の支給制度を知らなかったり、利用したことが無かったりするものが、約6割もいたという驚くべき状況が明らかにされました。これらの者は、1・2級の視覚障害者手帳を取得している者であり、少なくとも一度は、障害者福祉の説明を受けているはずなのですが、それが伝わっていなかったとしか言えません。

 皮肉にも、震災により、行政や支援団体から、積極的に支援の手を差し伸べたことにより、沈黙していた障害者の支援のニーズに応えることができたということになります。
 これは、東北地方に限ったことではないはずです。現在の障害者福祉では、障害当事者から声を挙げなければ(申請しなければ)福祉サービスを受けることも、知ることもできません。黙っているから何もしなくてよい、と、いうことでは、福祉の役割を果たしているとは言えないのではないでしょうか。私たちの様な障害当事者団体であれば、様々な福祉の情報を共有したり、要望したりすることができます。しかし、福祉は、私たちの様な団体加盟者だけのものではありません。障害などにより、福祉サービスを必要とするすべての人のものでなければなりません。福祉行政の、いわゆる「申請主義」という者が、このままでよいのかということも考える必要があると思われます。
 (少々、防災ということから離れてしまいました。)

東日本大震災において、犠牲になられた多くの方のご冥福をお祈りいたします。と、ともに、
 未曽有の震災に見舞われました地域の復興をせつに願うとともに、被災された方々が、一日も早く、元の暮らしを取り戻し、未来への展望が開かれますよう心よりお祈りいたします。

参考資料:東日本大震災の視覚障害者支援とその教訓 - 日本盲人福祉委員会の支援活動 -
※日本盲人福祉委員会とは、社会福祉法人 日本盲人会連合、社会福祉法人 日本盲人福祉施設協議会及び、全国盲学校長会が連携、協力して組織されています。




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視覚障害者の防災対策に関連するリンク集
1.
「目の不自由な方のための災害時初動行動マニュアル」…東京都心身障害者福祉センター編

『目の不自由な方が大災害に備え適切な行動をとることによって、命を守り、必要な支援を受けられるための手助けになることを願ってこのマニュアルを作成しました。
このマニュアルを目の不自由な方に繰り返し読んでいただき、災害に対する心構えを知り、できることから準備を始めてください。
 「視覚障害」についてよく知らない周囲の方々に、目の不自由なことで災害時にどのようなことに困り、どのような支援や介助が必要なのかを自ら発信し、伝えるための参考にしていただけたら幸いです。
 あなたの大切な命を守るのは、あなただということを理解していただき、このマニュアルを活用してください。』
ALIGN="right"<東京都心身障害者福祉センターより>



ALIGN="left"
2.
視覚障害者だけでなく、様々な障害の特性に応じた「防災マニュアル」が、東京都心身障害者福祉センターのホームページに紹介されています。
防災のことを考えてみませんか  ~防災マニュアル(障害当事者の方へ)~東京都心身障害者福祉センター

3.
日本ロービジョン学会からも、見えない、見えにくい方のための災害対策リーフレットが発行されています。ダウンロードして自ら読んだり、周囲の方に理解を持ってもらうために配ったりするなどしてください。
日本ロービジョン学会:災害対策情報


4.
「災害時要援護者をみんなで守ろう」…東京都防災ホームページ
災害時要援護者名簿(避難行動時要支援者名簿)の活用で、自らの命を守る備えをしておきましょう。

5.
災害に備えて 東京都府中市ホームページ

6.
災害時要援護者名簿へご登録ください 東京都府中市ホームページ

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 このブログでは、こうした活動の報告や、視覚障害をより知っていただけるような記事を綴ってゆきたいと思っています。