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指導者研修会「東京都の防災対策」より《11月7日》

平成28年11月7日に、東京都盲人福祉協会 指導者研修会が、行われ、「防災対策全般の説明および東京都防災対策について」の講演が行われました。

 私たち自らの問題として、災害時における避難行動や、日頃からの防災意識を高めることを目的として、東京都総務局及び、福祉保健局の担当者を講師に招き、指導者研修会が行われました。

1.[災害対策の概要]
 大規模災害が発生した場合には、「災害対策基本法」にのっとり、国や自治体に、災害対策本部が設置され、警察や消防、各支援機関などと連絡および、連携を図って、その対応が行われます。
 各自治体は、平時から、地域防災計画を策定し、災害に備えることとなります。
 東京都の地域防災計画では、首都直下地震等による被害を抑制するため、以下の3つの視点のもと、具体的な目標を掲げて対策を推進しています。
・視点1「自助・共助・公助を束ねた地震に強いまちづくり」
・視点2「都民の命と首都機能を守る危機管理の体制づくり」
・視点3「被災者の生活を支え、東京を早期に再生する仕組みづくり」

 府中市においても、私たちが積極的に、地域防災計画の内容を把握して、障害者に必要な措置が行われているかを検証する必要があります。

2.[東京で想定される災害]
 まず第一に懸念されているものが、首都直下型地震で、30年以内に、70%の確率で発生するといわれています。その他にも、昨今の異常気象による、ゲリラ豪雨や、大型台風など、災害は、いつ起きても不思議ではないということを再認識する必要があります。

 首都直下型地震では、震度6強(M7.2)の揺れが想定され、建物の倒壊や火災により、多数の犠牲者や、負傷者が想定されています。そして、都内では、300万人以上の避難者が想定され、また、交通機関のマヒにより、500万人以上の帰宅困難者も発生すると見込まれています。
 そうした中で、私たち視覚障害者は、状況の把握や、情報の取得が非常に困難になるということは言うまでもなく、自らできることと、誰に、どのようにして支援や保護を求めてゆくかということを整理して、地域で対策を協議しなければなりません。

3.[避難行動要支援者名簿]
 平成18年度に、総務省では、災害時要援護者の避難支援ガイドラインを示し、災害時における、高齢者や障害者などの災害時の避難支援について周知させてきたが、平成23年3月11日の東日本大震災において、65歳以上の高齢者は、犠牲者の6割を超え、障害者の死亡率は、被災住民全体の死亡率の2倍となっている。一方、消防職員や消防団、民生委員などの支援をする側にも、多くの犠牲者を出している。こうしたことから、この震災の教訓を踏まえ、平成25年の災害対策基本法の改正では、避難行動要支援者名簿の実効性のある活用がなされ、避難支援が円滑に行われるように各市町村に避難行動要支援者名簿の作成を義務付け、その名簿の管理や扱いについて、厳密に定められるようになった。
 市町村では、地域に住む支援が必要な高齢者や障害者の実態を把握し、避難行動要支援者名簿を作成する義務があり、、本人の同意のもとに、氏名、住所、連絡先電話番号、生年月日、支援が必要となる事由などを名簿に記載する。
  平時においては、本人の同意のもとに、消防機関や民生委員、町内会や消防団など支援関連機関へ、情報提供することができる。、
 災害が発生している場合、もしくは、その危険が迫っている場合には、名簿記載の本人の同意の有無にかかわらず、消防や、支援関連団体へ、名簿の提供をすることができる。
 名簿の提供を受ける者には、個人情報保護のため、名簿の内容について守秘義務を負い、その漏えいを防ぐための措置を講じなければならない。などと定められています。

 支援を受ける側の課題としては、自ら、名簿への記載を申し出ない限り、災害時等に支援を要する者として、行政や支援機関から認識されないということになります。被災した際に、自分自身で何ができて、何ができなくなるのかを、謙虚に考える必要があります。

 障害者の実態の把握は、私たちの様な民間団体では、不可能であり、行政からの積極的な障害者の実態把握が求められる。
 発災時の名簿の情報の提供先についても、円滑に支援が行えるように、情報提供先について事前に選定し協定などを締結する必要もあると思われます。

4.[避難支援の個別計画]
 避難行動要支援者名簿に基づき、地域での具体的な避難行動について、民生委員や社会福祉協議会、、並びに、町内会などの自主支援活動を行う支援関連機関は、要支援者個々と、個別計画をお作成することが望ましいとされています。
 個別計画の実現には、行政からの後押しの他にも、地域包括支援センターとの連携や、町内会での防災訓練などを通して日ごろからのコミュニケーションが大切になります。
 実際の問題点としては、本来であれば要支援者に該当されるであろうと思われても、本人が名簿記載に同意をしなければ名簿に載らずに要支援者と認識されずに、避難時に孤立したり、避難に送れたりすることで、災害時の混乱を助長してしまうことになります。地域での粘り強い説得や、啓発が必要であると思われます。

5..[ヘルプカードとヘルプマーク]
 東京都福祉保健局では、様々な障害者や、難病患者、および妊婦など、災害時だけでなく日常的に配慮が必要になるものが、安心していつでも、どこでも、必要な配慮や支援を受けることができるように、ヘルプカードを作成し配布しています。
 ヘルプカードには、その人がどのような疾患や障害であるのかということのほかに、緊急連絡先や、必要な手当てや薬の処方、必要とする配慮などが記載されます。
 外出先などで、急に具合が悪くなった場合などに、カードを提示することで周囲に救援を求めることができるように、行政においても啓発に力を入れています。

 ヘルプマークは、義足や人工関節、内部疾患、その他の障害や、妊娠初期の妊婦など、見た目には障害が有ったり、配慮が必要な状態にあったりすることがわからない人が携帯することで、周囲に対して、自らが配慮を要する状態であることを、周知させることを目的としています。
 現在は、東京都が中心となって、普及と啓発に力を入れていますが、これが全国的に普及してゆくことが望まれます。

 ヘルプカードやヘルプマークを携帯する側の意識の問題として、平常時には、自らの障害について、周囲に知られたくないという意識を持っている人も少なくないと思われます。例えば、視覚障害の場合には、弱視の場合、眼鏡やコンタクトレンズで矯正した視力で生活していると、外観からは、視覚障害者であることが認識されていません。そのような中で、マークを提示することで、周囲から障害を装っているのではないかなどという、疑念を持たれてしまうことを心配している人もいると思われます。
 また、弱視の視覚障害者が、ヘルプカードを記載する際の留意点として、見える状態を、矯正視力の状態ではなく、裸眼視力の状態での状況を記載しておく必要があると思われます。特に、災害時には、眼鏡が破損したり、コンタクトレンズを紛失したり、水道水が使えないことで、コンタクトレンズの洗浄ができずに装着できない事態が想定されます。普段矯正視力で生活をしているところから、急に、裸眼で行動することは非常に困難で危険でもあります。普段できることが、災害時などにはできなくなることもあるということを自覚する必要もあります。

ブログ内関連記事:「ヘルプカードとヘルプマーク」を参照

6.[共助、自助による防災対策]
 地域防災計画に基づいて行われている、地域、あるいは、広域の避難訓練などに参加することで、災害時における障害者の問題を行政や消防をはじめ、町内会や消防団など支援関連団体などと、共有してゆくことが必要です。
 避難訓練や防災訓練の実施に当たっては、地域に在住の避難行動要支援者に該当すると思われるものに対して、行政などからも参加を促すような啓発を積極的に行ってゆく必要があると思われます。広報誌や、回覧板などだけでは、情報すら届かないのが、視覚障害者であるので、その広報のしかたにも工夫が必要になります。

 私たち障害を持つ当事者が、災害時に、何ができて、何ができなくなるのかを、自らも自覚して、周囲の者に、理解と協力を求めてゆくことが災害から身を守る第一歩になります。周囲の人間の「心のバリアフリー」を、求めてゆくだけでなく、自らも障害が有ることを受け入れて、必要な配慮を求めてゆく姿勢も必要だと思われます。

 大災害が発生すると、健常者であれ、高齢者、障害者であれ、誰にも等しくその災害は襲い掛かってきます。そのような中では、障害者だからと言って、優先的に救援が来るというわけにはいきません。まずは、自分自身の防災対策として何が必要となるのかを整理して、備蓄や、緊急持ち出し品として持ち出すことができるような準備が必要です。
 東京都から全戸配布された「東京防災」には、それについてのヒントやアドバイスが集約されています。しかしながら、「東京防災」の音声録音盤が視覚障害者に行き渡っていないという現状があります。
 都盲協においては、デイジー版の作成を早期に促してゆく必要があったと思われます。(デイジー版については、サピエ図書館からダウンロードすることが、すでにできるようになっています。また、東京都の防災ホームページでは、パソコンやモバイル端末で読み上げることができる、HTMLのページが公開されています。)
ブログ内関連記事:「防災ハンドブック『東京防災』視覚障害者への配慮について」を参照

7.[災害時の避難行動]
 大災害が発生した場合に、視覚障害者がまず直面する問題は、周囲の状況把握が困難になり、身動きが取れなくなるということだと思います。これについては、周囲の人からの支援を期待するしかないのかもしれません。ヘルプカードなどの周知や活用が進んでゆくことを望むほかありません。

 住宅が被災したり、ライフラインが寸断したりして、自宅にいられない状態や、外出していて、帰宅が困難になった場合には、地域の指定避難所に、一次避難として指定の施設に避難しますが、そこへ行くことからして困難であることが想定されます。また、避難所に到着しても、居場所を確保したり、周囲の被災状況を知ったりすることも困難になります。様々な情報が掲示板に張り出されていても見ることができないということや、炊き出しや給水などの列に並ぶことも難しく、情報伝達や、物資の支給方法などに配慮を求める必要があります。
 東日本大震災などで実際に避難された経験者からは、トイレが最も困ったこととして挙げられています。トイレまで行くことに始まり、使い方や便器の配置に至るまで、手さぐりになったといわれています。
 誰もが被災している中で、どこまで合理的配慮を求めてゆくことができるのか、行政や、防災支援関連機関などと入念に協議してゆく必要もあると思います。

 二次避難所として福祉避難所の開設が地域ごとに定められています。府中市では、各文化センターと、ルミエール府中及び、生涯学習センターが、二次避難所として機能することとなっていますが、市内にある、都立の施設(都立高校など)について、避難所として機能することとなっているのかなど確認する必要もあると思います。
 また、福祉避難所として機能するには、各種障害にそれぞれ精通した支援員の配置が必須になります。災害発生時に、そのような支援者を確保できるのかということも検証する必要があります。

8.[平時における防災対策の周知]
 各自の居住地域の指定避難場所や避難所の場所について、視覚障害者には、地図を提供するだけでは、場所を把握することはできません。各自個別に、最寄りの避難場所や、避難施設までの道のりを把握しておくことが大切です。その際には、防災担当職員や、地域の支援者などとともに、その道を歩き、有事の際に危険となる箇所を想定しながらシュミレーション歩行することも必要かもしれません。
 また、自らが居住している場所の災害リスクについての情報も、ハザードマップの配布だけでは不十分であり、伝え方にも個別の配慮が必要となります。

まとめ[視覚障害当事者団体(府中視協)として取り組むべきこと]

 府中視協の会員にとどまらず、市内に潜在しているすべての視覚障害者の防災対策として、市に対して、地域防災計画における障碍者対策についての、情報の開示とその内容について適切であるかを協議してゆく必要があります。
府中視協として、府中市や関連機関と、確認、協議すること
1.見えないということを前提とした情報の提供や伝達方法
3.避難行動要支援者名簿の平時における活用(地域の防災訓練などに活用するなど。)
4.災害時に避難行動要支援者名簿を提供する支援関連団体などとの協定の締結について。
5.府中市内での地区別の災害リスクとそれに対する対策
6.地域での防災訓練などへの参加についての課題を整理する。
7.避難所における、障害者への必要な配慮をまとめ、配慮が保証されるために必要なことを協議する。
8.避難行動の個別計画を、作成するための課題や問題点を整理する。




◇研修会で少々気になったことを挙げておきます。

今回の指導者研修会で終盤に質問されていた、「避難時における盲導犬の扱われ方について、」の質問に対しての東京都総務局総合防災部の職員の方の回答が、認識にかけているように感じました。
 その回答では、盲導犬をペットと同様であるかのような扱いをすることを、容認しているかのような発言がされていました。
 周囲からは、「盲導犬は、ペットではないだろう。」と小声で抗議されていた方もいましたが、これは、行政官としても認識を欠くものであります。もちろん、直後に、福祉保健局の職員から、盲導犬は、障害者補助犬法が優先して適応されるものであると訂正されていました。
 東京都の職員においても、盲導犬に対する認識が低いことが露呈してしまったのでしょうか。
 「東京防災」の音声録音盤についても、視覚障害者を抜きにしたような、一方的な配慮(音声コード版の配布)で終わってしまっています。そもそも、東京都から都民に向けて全戸配布されたものであるので、視覚障害者向けの録音盤についても、東京都が主体的に作成し、必要な世帯に配布するべきものです。

◇最後に、東日本大震災における、視覚障害者への支援の実態について調べてみましたので、追記しておきます。

 未曽有の震災に見舞われた東北地方太平洋沿岸では、誰もが被害を受け、被災しました。そうした中で視覚障害者への支援の手は、容易に差し伸べられるものではありませんでした。
 まず、どこにどのような障害者がいるのかがわかりません。各地の視覚障害者協会や、点字図書館利用者、盲学校の名簿などがあっても、それは、視覚障害者全体の1割程度にしかなりません。各地に点在する視覚障害者の救援のために、日本盲人福祉委員会は、各地の避難所を回り、視覚障害者の支援を行っていました。当初は、行政側から障害者手帳所持者の情報が得られず、救援活動も進みませんでしたが、宮城県を皮切りに、日盲委に1・2級の視覚障害者の支援要望名簿が提供され、支援が本格化してゆくこととなりました。
 こうした支援活動が進む中で明らかになったことは、視覚障害者手帳所持者(1・2級)の8割が、地域に潜在してしまっており、数十年にわたって孤立していたという事例もありました。中高年で失明してしまった場合などには、絶望と孤立で周囲との関係も断絶してしまうことが顕著に表れています。
 そうした人たちにおいては、長期間にわたって情報からも隔絶され、福祉を受ける機会すらない状況に陥ります。その内の半数近くの人は、音声時計の存在を知らず、6割近くの人が、日常生活用具の支給制度も知らなかったという現実があらわにされました。
(参考資料:社会福祉法人 日本盲人福祉委員会より、「特集、東日本大震災における視覚障害者の状況と支援」から、

 これは、大震災によって、くしくも明らかにされた障害者福祉の実態ではないでしょうか。東北地方の農漁村部や地方都市ならではのものと見ているわけにはいきません。東京や都市部においても似たような状況であると想定するべきであると思われます。




関連カテゴリー:カテゴリー⑦ 視覚障害者と防災対策を参照してください。

【東京都内各区、各市の視覚障害者団体(都盲協傘下支部)リンク集】

都盲協板橋区支部 板橋区視覚障害者福祉協会
NPO法人江戸川区視覚障害者福祉協会
都盲協品川区支部・品川区視覚障害者福祉協会
都盲協世田谷区支部 NPO法人世田谷区視力障害者協会
NPO法人中野区視覚障害者福祉協会
NPO法人 杉並区視覚障害者福祉協会
都盲協日野市支部日野市視覚障害者協会
三鷹視覚障がい者協会《ぴあ・さくらんぼ》
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 私たちは、東京都府中市内に在住する、目が見えない、見えにくいという障害を持つ当事者とその家族、そして、様々なサポートをしていただいている方々で活動をしています。
 市内には、およそ500人余りの視覚障害者がいるとされています、その他にも、障害未満の“ロービジョン”の方々を含めると、その数はさらに増えることとなります。府中視覚障害者福祉協会(府中視協)は、府中市内で生活する、視覚障害者のQOL(quality  of life:生活の質)の向上と、障害への理解を深めていただくための活動、及び、障害を持つ当事者とその家族の親睦を図り、日常生活での悩みや困りごとを共有して、その解決を図るために会員相互で協力し合い、共助では、補いきれないようなことについては、市政や福祉に働きかけて私たちの暮らしに反映させてゆくことをモットーにしています。

 視覚障害とは、単に、目が見えない、見えにくいということだけではなく、そのことにより、日常生活や、就労、就学などにおいて、様々な制約や不利益など、社会的障壁によって生じることによる障害であるといえます。

 私たち府中視協は、日々の活動を通して“障害が有る無しに関わらず、誰もがいつまでも安心して暮らし続けられるまちづくり”を、市民の皆様とともに、進めてゆきたいと思っています。
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 このブログでは、こうした活動の報告や、視覚障害をより知っていただけるような記事を綴ってゆきたいと思っています。